ISIL(自称イスラム国)問題~ウクライナ~日本~朝鮮

2015年05月02日 03:40

反覇権の時代の流れに沿い、九条平和国家の実現を!

                        赤木志郎

 アメリカの覇権回復のための謀略、武力干渉がひんぱんに行われている。その代表的なものがウクライナの分裂と内戦であり、「イスラム国」掃討を口実にしたアメリカのシリア、イラクでの空爆である。キューバなど中南米反米政権との関係改善は、社会主義転覆とアメリカの影響力回復のためだと公言している。そうしたアメリカの覇権のための新たな策動に対し、外国勢力を排し自分の問題は自力で解決しようとする地域共同体がさらに強化され、国と民族の自主権を守る闘いがいっそう前進している。
 一つは地域共同体の強化である。昨年、赤道ギアナでの第23回アフリカ同盟(AU)首脳者会議において、2020年まで紛争と戦争を終結させ、アフリカ大陸での平和と安全を実現すると合意するとともに、政府と国際機構の役割を高め繁栄するアフリカを建設していく課題を打ち出した。この会議は外国に依存することなく大陸自身の力でアフリカの問題を解決していく闘いの前進に大きな意義をもっている。また、ロシアのアストランで行われたカスピ海沿岸首脳者会議では、カスピ海での法的地位問題をめぐる対立が経済発展と安全保障に支障を与えるだけでなく、欧米の介入の口実を与えるだけだとの意見一致をみた。多極化もさらに推進された。ユーラシア同盟創設の条約批准が行われ、今年初めよりアルメニアが新たに加入し、キルギスタンも加入のための協定に調印し、5カ国に拡大している。ASEAN経済共同体が今年末に結成されることになっており、EUの5億人を上回る6億人の巨大な市場が生まれるようになる。
 もう一つは、国と民族の自主権を守ろうとする闘いが激しく展開されていることである。その典型がウクライナにおける住民の闘いである。CIA工作員に買収されたデモ隊で合法的政権を倒し生まれたウクライナ政府にはアメリカ国務省の職員など外国人4人が閣僚として入っており、それを見ても、到底、ウクライナ国民のための政府とはいえない。東部ウクライナの二つの州が独立を宣言し、欧米に従うウクライナ政府を追いつめている。アメリカとEUの経済制裁を受けているロシアは反帝の立場を堅持しており、ギリシャでは急進左翼進歩連合が政権を握り「EUの緊縮財政路線の変更」を主張している。アジアでは、朝鮮が昨年の史上最大の米韓軍事演習に断固、対決する姿勢を示し、今年に入って反米気運をかつてなく高めている。結局、アメリカが必死に謀略を駆使しあがけばあがくほど、世界はますます各国の共同した力で解決していく地域共同体が強化され、自主権を守る闘いはいっそう強められ、アメリカの覇権回復策動が破綻していくということを示している。そういう意味で、今年はアメリカの滅び行く覇権策動と反覇権・脱覇権の闘いとの決戦の年になるといえる。ところが、安倍政権はアメリカと運命をともにし、その覇権策動の尖兵になろうとしている。そのことがいかに時代の流れに逆行するものであるか、日本を破滅、消滅の危機にさらすものとなるかは言うまでもない。反テロであろうが何であろうがいかなる理由があろうといかなる戦争にも参加せず、不戦の九条平和国家として立場を貫くことが反覇権の時代の趨勢に合う日本の在り方だと思う。

日本と世界を徘徊する「歴史修正主義」という妖怪    ポーランド外相が「アウシュビッツなどユダヤ人強制収容所を解放したのはウクライナ軍だ」と発言して物議をかもしている。収容所解放のソ連赤軍が「ウクライナ師団」という名称だったことを「ウクライナ軍」と言い換え、ソ連軍が解放したことを否定した。  これより先、ドイツを訪れたウクライナ首相が「第二次大戦後、ウクライナはソ連軍に占領された」と発言、「(ソ連軍による解放前の)ナチス支配を正当化する発言」としてロシアからの猛烈な抗議を受けた。事実、ウクライナの今の混乱状態の発端となった昨年の「民主革命」という政変劇で武装暴動の主力を担ったのが親ナチス右翼武装勢力だったことは衆知の事実だ。  ヨーロッパに徘徊する歴史修正主義は、反ファッショ、対ナチス・ドイツ戦争でのロシア(ソ連軍)の役割を否定し、米国とNATOのつくり出した「ウクライナ危機」で反ロシア対決機運を煽ろうとする歴史修正主義だと言える。  わが日本での歴史修正主義は、靖国、従軍慰安婦問題で安倍政権が過去の侵略と戦争、植民地支配の歴史を改ざんするものとしてあり、戦後70年の8月首相談話では「これまでのスタイルそのまま」にしないと安倍自身が明言し、「植民地支配と侵略」への謝罪を否定するものとして歴史修正を完成させる意志を明らかにしている。  これに呼応するかのように昨年、「従軍慰安婦誤報」問題で異常なバッシングを受けた朝日新聞が戦後70年の新年元日社説で、歴史修正主義に白旗を掲げ、安倍政権への投降を宣言した。社説は、どんな国も自分に都合の悪い歴史は「なるべく忘れ、問題にしない」ものだとするフランスの思想家ルナンの言葉を引用しながら、歴史修正主義に陥るのはナショナル・ヒストリー(国ごとの歴史)につきものの宿命であると結論した。だから各国の歴史に代わる「グロバル時代の歴史」が必要だという主張だが、これは歴史修正主義に陥るのが各国歴史の宿命で仕方がないことを肯定するための詭弁に過ぎない。  後藤さん、湯川さんの犠牲に対し「罪を償わせる」という安倍首相の勇ましいかけ声が「憎悪の連鎖にしてはならない」という後藤さんのお母さんの声を封殺し、イスラム国撃滅への反テロ戦争参戦へと日本を向かわせている。この推進役として日本における歴史修正主義の妖怪は、安倍首相8月の終戦談話として姿を表す。不戦を誓った日本の夏にこの妖怪の出現を許してはならない。

                                                       WAKAB.  

「イスラム国」による湯川遥菜さん後藤健二さんの人質そして殺害。この衝撃的な事件から浮き彫りにされたことは安倍政権の冷血さ非道さだ。 二人が人質にされていることを知りながらエジプトで2億ドルもの「中東支援」を表明し、殺害予告が出るや「テロの屈しない」として要求を拒否し、二人の生命を救うための行動も見られなかった。 そうした安倍首相の行為に対して怒りの声が高まり、日本がテロに巻き込まれる危険性の増大を危惧する声が高まっている。 これに対して「永続敗戦論」の白井聡氏が週刊金曜日(2月6日号)の「人質事件を奇貨とする安倍政権の狙い」と題する小文で含蓄ある発言をしている。「要するに安倍政権にとってパリでのテロ事件と人質事件の急迫は奇貨として利用すべきもの以外の何物でもない。ゆえに安倍政権は本気で人質救出に取り組んでいないではないか、あるいは軽率にも対テロ戦争に引き込まれる危険性を冒しているといった批判は有効ではない。なぜなら、まさにそうした行動は政権が意図的にやってることだからである」と。 奇貨。辞書には「利用すれば思いがけない利益が得られるかもしれない事柄、事情、機会」とある。 実際、事態はそのように動いている。二人の殺害に対する国民の怒りを利用して安倍首相は「罪を償わせる」だの「日本人には今後指一本触れさせない」などと、明日にでも「イスラム国」との戦争を始めるかのような姿勢を示し、そうしつつ、今の法律ではそれができないとして「戦争できる国」への法改正やさらには憲法改正まで言及するに至っている。 実に狡猾極まりない。 その上、今、安倍政権を批判するのは「非国民」だというような雰囲気が作られている。フジテレビの平井文夫報道局解説委員は「報道2001」で、「安倍政権を批判するものはイスラム国と同じ」と発言したが、マスコミは安倍批判を手控え擁護し、ネット上では安倍批判をする者を非国民視する言葉が飛び交っている。 白井さんの見方によれば、それも「二人の死」「日本でのテロの危険性増大」を利用して「意図的にやってる」ものとなる。 オバマは後藤さん殺害に関連した声明で「中東及び世界の平和への日本の関与を賞賛する」と述べた。米国にとっては、「中東への2億ドル支援」もありがたいことであり、その上、軍事関与してくれれば、これ以上の喜びはないということである。 米国が喜ぶことのために、二人を死においやり、国民をテロの危険性にさらし、戦争へと駆り立てる。これを非国民と呼ばず何というのか。安倍首相こそ非国民であり、売国奴である。安倍首相の「戦争できる国」策動と徹底して闘わねばならない。                                                        魚本公博

 

 安倍首相は、誰の声を聞くのか?    後藤健二さんの犠牲に心から哀悼の意を表します。  後藤さんの救出を切々と訴えたお母さんの言葉と彼に接した周りの人達の話しから、後藤さんが「戦争のない社会をつくりたい」「戦争と貧困から子ども達の命を救いたい」という思いと覚悟をもって活動してきたことが伝わってきました。私は、そのような人だから、なんとか解放されるだろう、解放されて欲しいと願っていました。しかし、結果はあまりにも無惨でした。  ある人が、「『イスラム国』と日本政府に裏切られたような気がする」と、言っていましたが私も同じ気持ちです。後藤さんのお母さんは、わが子の犠牲を目の前にしながらも、「・・その悲しみが『憎悪の連鎖』となってはならない、健二の遺志を私たちが引き継いでいくことを切に願っています。」と、国民に訴えました。私は、お母さんが特に伝えたかったのは安倍首相に対してだと思います。  今回、安倍首相の日本国民の意に反した言動によって、日本人の尊い思いと生命が犠牲になり、国民皆が敵にされ、脅威にさらされるようになったのです。  日本国の首相である安倍首相は一体誰の声を聞いて、誰の利益を守ろうとしているのでしょうか? 昨年から、後藤さんたちが人質になっていることを分かりながら、イスラエルをはじめ中東に行って意気揚々と反テロのために2億ドルの援助をしますよと言って歩き、2人が犠牲になれば、それをみよがしにテロの残虐性を宣伝し、結局、アメリカの意図に従順に従っただけです。オバマ大統領が掲げる、有志連合・空爆戦略、一連の中東政策に、後は、アメリカの強力なパートナーとして、自衛隊を派遣するだけです。この流れをつくるために。今回、後藤健二さんは利用された、そのために犠牲になった。どんなに無念であったことでしょうか。お母さんの思いが伝われば伝わるほど、安倍首相に怒りがわいてくるのを押さえることができません。  戦争、紛争の起きるところに必ずアメリカの影があり、そのアメリカに基地を提供し、「人道支援」の名目で後方支援をし、今は、自衛隊まで派遣しようとしている日本、安倍政権。日本国の首相として、「反テロ」戦争を作り出すアメリカに従うのか、それとも、二度と侵略戦争をしないと誓った日本国民に従うのか、シビアに問われた戦後七〇年の年明けでした。  米日の朝鮮敵視政策に利用された、「よど号拉致問題」を初め、「よど号問題」の解決のために闘っていくことが、後藤さんのお母さん、日本の人々と思いを少しでも共有していくことだと改め強く心した私です。

                                 若林佐喜子